研究課題
1、 山科郷士にかかわる基本資料の調査・整理・翻刻山科郷士関係文書の所在調査、史料収集をおこなった。特に山科郷士の惣頭であった比留田家の古文書の本研究機関への寄託をうけ、その全面的な整理をおこなった.この比留田家文書を始めとする古文書の主要部分については、資料翻刻をおこない、成果報告書の史料編として刊行した.2、 山科郷士の成立・展開・消滅に関する研究(1) 中世山科郷は公家山科家の荘園であったが、足利義政の御台所日野富子の別荘や、蓮如によって山科本願寺が営まれるなど、京都直近として中央政治の影響を色濃く反映した.中世後期における山科郷民の自治組織「惣郷」の形成は既に知られているが、それがこのような京都の直接的な影響のもとに形成されてくる点の解明は、あらたな視点である.(2) 近世山科郷は禁裏御料となったが、かって「惣郷」をになった土豪が郷士として禁裏警護をはじめさまざまな禁裏奉仕役をおこなう身分に位置づけられた。そうした郷士および一般百姓の禁裏奉仕の実態、郷士が庄屋などを独占するという「惣郷」の近世化などが具体的に史料から解明された。(3) 明治維新に際し、山科郷士は日常的な禁裏奉仕の延長として「山科隊」を組織するが、同じく草莽の勤王隊として知られる、中世禁裏御料であった丹波国山国郷や禁裏御料とは全く関係のない大和国十津川郷などとも対比される.(4) 東京遷都や徴兵制度にともなって禁裏郷士制度は廃止されるが、旧郷士身分の意識はその後も残り、明治天皇の葬儀への参列を求める願書を出したことなどの事実が発掘された。また山科地域の古老40人以上からの聞き取り調査によって、なお郷士の家格にかかわる民俗が残されていることも判明した。
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