前年度に引き続いて、各地教育委員会、埋蔵文化財センター、埋蔵文化財調査事業団等の協力を得て、繊維土器や炭化資料が付着した縄文土器片および同層の木炭や貝殻の提供を受けた。今年度は、主として草創期〜前期を中心に、縄文がなるべく鮮明に残されていて、形式が明確に同定されている土器片を選択した。 また、昨年から持ち越しとなっていた基礎実験を行った。測定に用いる土器資料の部位、化学処理法の可否を検討すると同時に、埋没中に周辺土壌から受ける影響(汚染)の可能性を評価した。資料は、1996年に発掘が行われた新潟県妙高村葎生(もぐろ)遺跡から出土した、縄文時代後期および晩期の土器片とそれぞれを包含する土壌資料を用いた。後期、晩期それぞれの土器片について、1)表面付着物、2)土器胎土表面、3)内部黒色部分、4)土壌中から得られた木炭、5)土壌から抽出した腐食、6)フミン酸を、それぞれ化学処理したのち、年代測定を行った。当該遺跡については、フミン酸が地層間を大きく動いた様子がなく、結果的に土器片が土壌から影響をうけた形跡は認められなかった。現在、データを解析中である。 昨年来問題となっている、学内共同利用で使用する加速器質量分析(AMS)装置の状態は満足できるものではないが、年明けには誤差200年程度で測定できるまでになった。今後、施設側と協力して、当初予定していた精度(誤差40年以内)が得られるよう、解決にあたる予定である。 土器型式の年代値データ収集は、特定の地域(東北日本および北海道、九州および南西諸島)の型式を対象に行い、約200件入力した。
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