今年度も、各地教育委員会、埋蔵文化財センター等の協力により主として草創期〜前期を中心に、縄文がなるべく鮮明で形式が同定できる土器片、および同層の木炭や貝殻の提供を受けた。 新潟県妙高村葎生(もぐろ)遺跡から出土した、縄文時代後期および晩期の土器片を用いて行った前年度の基礎実験により、当該遺跡ではフミン酸が地層間を大きく動いた様子がなく、結果的に土器片が土壌から影響を受けた形跡は認められないという結果を得た。今年度は、これに基づいて、主として繊維土器の内部に燃焼せずに残っている黒色物質を用いた年代測定の妥当性を検討した。黒色部分の炭素含有率は2〜3%で、汚染を除く化学処理を行っても、年代測定に必要な炭素を十分に含んでいる。一方表面近くは黒色を呈することはなく、炭素も0.5%以下を示すことことが多い。両資料の汚染除去、測定を行い、年代値に影響を与える胎土中の炭素(おそらく古い年代を示す)、および土壌からの炭素を評価した。これまでに測定した資料については、これらの影響は少なく、年代測定が可能で、供伴物の年代と一致した結果が得られている。 本研究課題開始以来問題となっている、学内共同利用で使用する加速器質量分析(AMS)装置の状態は未だに満足できるものではないが、年末から年明けにかけて誤差100年程度で測定できることが多いという状況になった。今後、施設側と協力して、定常的にこの状態を維持し、さらに当初予定していた精度(誤差40年以内)が得られるよう、解決にあたる予定である。 土器型式の年代値データ収集は、関東地方太平洋沿岸地域の縄文前期の土器形式を対象に行い、約200件を入力した。
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