本研究は、北方の少数民族言語を中心とする今世紀前半の言語音声資料が一昨年から入手可能となったことを受けて行うチュルク系言語の研究である。本年度は3年度にわたる本研究の初年度であるので、音声資料の選定とその大半の購入を行った。まず、北方シベリアに分布するチュルク系言語の資料を中心に購入し、さらにこれら言語の周辺に位置する言語の資料も購入した。その際には、録音の年代と地域及び現在のそれら言語の消滅の危機の度合いも考慮した。購入した資料の中には今世紀初めに蝋管の形で録音されたものもあったが、全てカセットテープとして収録されている。このため、音声資料の確認作業には現有のプレーヤーを用いた。なお、以前にこの音声資料のシリーズから別個に入手していたヤク-ト語の資料もこれらの資料に加えた。 本年度は藤代はドルガン語、ヤク-ト語の資料のテキストの解釈を試みた。録音状態が非常に悪いものが多いが、散文体で語られているもののなかには解釈し易いものもあった。来年度はテキストにおこす作業を続行する一方で、その言語学的観点からの研究を発表したい。そのための布石として主として北方チュルク系諸語を通じての語彙研究にも本年度は重点をおいた。ロシア十月革命以前に録音されたテキストにおける語彙を整理することは、本研究において重点的に行う作業のひとつであるため、本年度は補助金にてノートパソコンを購入し、現代語を含むチュルク語のデータ入力と分析等も行った。なお、庄垣内は中央アジア地域までの広範に分布するチュルク語全般からの観点とともに古代チュルク語からの情報も合わせて提供し、テキスト解釈、データ整理において北方チュルク語研究の方向性を示した。来年度はさらに具体的にヤク-ト語話者からの協力を得て、より多くの音声資料を扱っていきたい。
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