GIIの展開は、アメリカのNII(全米情報基盤)行動アジェンダ、そしてブッシュ政権末期のHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)法の制定に遡るが、更にアメリカにそうした動きをもたらしたものは、日本のNTTのVI&Pという計画であった。2015年までに日本全国を光ファイバーでカヴァーするとNTTが宣言したのである。このことからも、日本のテレコムのあり方がGIIと無縁であり得ないことがよく分る。その後、GIIは、当初のゴアの提案の趣旨から外れ、通商問題化し、いわゆる電子商取引問題も含め、WTO(世界貿易体制)の中にとりこまれ、かつ、不公正貿易論と合体するものとなる。本研究では、GIIをめぐる諸状況が、とくにアメリカの通商政策の道具として問題ある流れを示しつつあることに対抗し、本来のGIIの姿を、社会・文化・歴史の多様性において明確化することに力を注ぎ、「世界情報通信基盤の構築-国家・暗号・電子マネー」(1997NTT出版-本補助金の助成との関係についてはP.311)、「国際知的財産権-サイバースペース VS.リアル・ワールド」(1998NTT出版)、そして「法と経済」(1998岩波)の3冊(そして、「日本経済再生への法的警鐘-損保危機・行革・金融ビッグバン」(1998木鐸社)の一部)において、アンチ・テーゼを示すことが出来た。但し、日本国内での認識はいまだ十分とは言えず、残念である。
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