研究概要 |
本年度は,公共財の一形態として,地球温暖化をテーマに取り上げ,京都会議で提案された排出権取引の理論研究を行いあわせてその実験も実施した.京都会議で提案された排出権取引においては,参加国の非対称性が重要なポイントになっている.すなわち,排出権を大量に供給できるロシアがある反面,排出権を大量に需要するアメリカがあり,その他の国々は,ロシア・アメリカに比して,相対的にその重要度が低い.このように,少数の国々でしか取引がなされない場合でも,効率的な取引になるような制度を設計した.この制度の理論的な特性は,必ずパレート効率性を達成できる,という点にある.この理論モデルをもとに,被験者を用いて経済実験を実施した.この理論モデルの比較のために,当事者が交渉により排出権の価格を決めるという実験もあわせて実施した.実験においては,理論モデルによる予測がはずれ,効率的な配分は達成できなかった.現時点では,なぜ達成できなかったのかに関する理論分析を始めているところだが,理論モデルにおけるサブゲーム・パ-フェクト均衡がユニークである一方,ナッシュ均衡は多数存在し,これがサブゲーム・パ-フェクト均衡に到達しない主な理由であると思われる.
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