本研究は、高信頼性で低コストの通信網を構築するために、どのような政策をもって基幹となる管路を構築するべきか、という問題意識に基づいている。そのために実際の地方都市の通信網の実態を調査し、ここから得られた情報に基づいたモデル構築するを目指す。初年度は、基礎的な調査を山形市を中心に、加入者と局とを結ぶ加入者系の特に地下化された部分の実態や網の構築コストについて、電話会社および地方自治体の協力のもと、聞き取り調査を中心に行った。また、筆者らはこのような生長する加入者系をモデル化し、高信頼性、低コストな網を構築するためには、事前に基幹となる管路を構築することが効果的であることを示したが、事前敷設をどのように行うべきかについては未解決であった。そこで、将来の潜在需要を見越した事前敷設をどのように行うべきか考える。先のモデルで示した信頼性とコストの評価指標を用い、全領域に加入者が発生するまで網を生長させた場合、信頼性指標として回線が切断された場合の影響を評価した社会影響Sのみ注目すればよい。そこで、全領域に加入者を発生させた場合に、どのような形状の網が社会的影響が小さくなるか調べ、網の信頼性が局のごく周辺の管路の形状に左右されることを明らかにした。局の東西南北のごく周辺の領域を観察すると、社会的影響Sの最小となるナットワークの構造的特徴として、1サイズ小さなS最小の網を成長させると求めることが可能であること。任意のサイズのSが細小な網の回線数分布などが求めることができること、などの幾つかの仮説を得た。これらは理論的証明には至っていないが、信頼性の高い網を構築するための事前敷設として有効なのは下優先型の事前敷設であること、また新しい加入者を既存の網に接続するときの経路が高々一回しか曲がらない、というモデルの仮定が結果に大きく影響していることが明らかになった。
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