本研究は地域活性化の基盤としての情報通信ネットワークを対象としている。今年度は地域活性化の起爆剤としての情報通信網の可能性を検討するため、二つの側面からの調査、研究を行った。 一つは地域活性化に情報通信網と並び重要な要因である道路、交通網に着目し、その整備が地域経済や地域間交流に及ぼす影響の検討である。道路網、鉄道網などの基盤整備により新たに創出されるヒト、モノの交流について検討することは、情報通信網の基盤整備によりもたらされる地域間交流の変化とそれに伴う地域活性化を予測するための具体的な手がかりとして重要である。そこでネットワークとしての高速道路の役割を主要都市間の時間距離とアクセル時間の変化として定量化し、梗塞道路網整備による東北地域の太平洋軸、日本海軸、東西軸それぞれの地域連携と地域間交流の影響を検討した。さらに鉄道網に着目し、山形新幹線開業による沿線への波及効果をアンケートを基に分析し、高速鉄道網が地域活性化へもたらす効果として地域住民生活、経済活動について分析を行った。 また望ましい地域情報通信網を検討するための別方向からのアプローチとして、地域密着型の情報通信網の形をより具体的な形で検討を行った。ここでは実際に山形市を例に、市内の公共施設(学校、公民館、図書館)間を相互に接続するような通信網を地域独自で構築した場合、どのような形のネットワークとなるのか、その具体的なネットワークの形状をコンピュータシミュレーション上で検討した。さらに近年著しい普及をみた移動体通信に着目し、その基地局設置政策についてもモデル化を行い、コンピュータシミュレーションを行った。そして、地域住民が時間帯ごとにさまざまな場所に移動するのに伴い需要分布が変動したり、基地局によってカバーされる領域によって実際の需要の生起が影響されるような場合、どのような政策で基地局を設置していくべきかについて検討を行った。
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