日本については、これまで東京興信所『銀行会社要録』の明治34年版、さらに大正4年版に収録された全国各地企業のバランスシート、株主構成をデータ化する作業を進めてきたが、本年はそれをもとに、明治期日本の企業がどのように資金を調達したか、産業別に整理した。その結果(1)明治期日本の産業発展を支えた紡績、鉄道、電気など大企業の資金調達は、その大半を株式市場から調達し、銀行は補完的な役割を果たしたにすぎないこと、これに比べ(2)織物、金属、食品などの産業では銀行借り入れへの依存度が高まること、また(3)資本規模が小さい企業についても銀行借り入れの依存が高まること、などの特徴が明らかとなった。株主については(4)紡績、鉄道など大企業は、1000人を超え、(5)それ以外の企業では100以下の規模に過ぎないこと、など有益な事実が判明した。 中国については、世紀転換期、香港上海銀行、チャータード銀行など英系外国銀行ならびに中国伝来の銭荘の役割について研究を進めた。その結果(1)外国銀行と銭荘のあいだには双方向の短期貸借関係(チョップローン)があったこと、(2)この貸借関係は貿易業務に関するものであったこと、さらに(3)チョップローンは、中国の輸出入の季節的なズレから生ずる銭荘の一時的な資金過不足を平準化するものであったこと、などこれまで不明であった両者の関係が明確となった。
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