本年度は、研究の初年度として、米国において、近年、マクロマーケティングの一分野として位置づけられ、活発な研究活動を開始しているマーケティング史研究の動向について中心的にサーベイを行ない、わが国研究との比較を通じて、マーケティング史研究の国際的課題について考察した。 米国においては、1983年以来、マーケティング史学会が隔年で開催されるようになっている。マクロマーケティング研究の機関誌的役割を果たしている『マクロマーケティング雑誌(Journal of Macromarketing)』は、この学会の後援者となっているばかりでなく、マーケティング史研究特集号を組むなどして力を注いでいる。 米国におけるマーケティング史研究は、マーケティングと社会との相互関係を重視するというクロマーケティング研究の基本的認識に根ざしているだけでなく、社会とその歴史・文化が異なれば、マーケティングの在り方も異なる、という視点を共有している。この研究潮流は、マーケティング=交換理論の受容と、方法論としての相対主義の影響のを受け、歴史的に多様なマーケティングのあり方に強い関心を示し、北アメリカのマーケティングを絶対視したり、その基準に合致しないものを「遅れている」とみなす傾向を「自民族中心主義的偏向」として厳しく退け、マーケティング史研究対象の地理的・時代的拡大を試みている。 こうした新たなマーケティング史研究の展開によって、わが国の伝統的な商業史研究とマーケティング史研究は、新たな位置づけを求められている。わが国研究者にとっては、こうした新たな研究潮流に積極的かつ柔軟に参画し、新たな国際的パラダイムの構築に貢献することが急務であると思われる。
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