研究概要 |
本年度は、研究の最終年度として,データベース化されている米国マクロマーケティング・セミナーの全報告書のなかから,特にマクロマーケティング学派が形成された事情と,マクロマーケティング概念をめぐる特徴的な論争をサーベイした.マクロマーケティング・セミナーが開始された1976年以後,マクロマーケティング研究とはなにかについての方法論的論争が行なわれた.ハントの提示した「多元的基準」に対して,集計水準基準,パースペクティブ基準などから種々の論議が行なわれ,機関誌 Journal of Macromarketingの創刊(1981年)の後,編集者であるフィスクが「作業的定義」を打ち出し,今日のマクロマーケティング研究の流れが確定された事情が明らかになった.それと同時に,この初期の段階から,マーケティング史,生活の質,マーケティングと開発といった今日のマクロマーケティング研究の主要分野がほぼ出そろっていたこと,マクロ的消費論,マクロマーケティング管理論など,マクロマーケティング研究に特徴的な論点も初期の段階から提出されていたことが明らかにされた. 以上のマクロマーケティング研究全般の考察に加えて,本年度は,マクロマーケティング研究の有力な一分野であるマーケティング史研究について,平成10年度科学研究費補助金「研究成果促進費」を新たに取得し,1999年1月29日付けで著作を刊行した.本書には長文の英文サマリーが付与されており,マクロマーケティング・セミナーおよびアメリカ・マーケティング史学会の主な研究者に送付された.今後の国際的討論の素材となることが期待される.
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