平成8年度から10年度にわたる本研究においては、企業の社会的責任をめぐる諸学説・理論を主として学説史的整理の視点から、ならびに経営理論的整理の視点から体系化・総合化することを試みた。かかる試みの成果についていえば、学説史的整理に関しては、社会的責任研究の流れを初期的研究、企業社会レスポンス研究、経営倫理研究という一連の流れとして捉えるフレデリックの所説を基本的手掛りに諸論者の学説・見解の展開動向を整理し、その成果の骨子を「社会的責任論の現状と課題」と題して社会関連会計研究誌に発表した。 また、経営理論的整理の面に関しては、社会的責任問題の展開の社会経済的背景、社会的責任の本質と動向、企業目的と社会的責任の関連、社会的指向の企業経営、および社会的責任と現代のコーポレート・ガバナンスといった問題を中心に諸論者の見解について総合的・体系的整理を行ってきたのであり、学説史的考察の成果をも部分的に含めつつ、これらの研究結果をとりまとめたものが研究成果報告書である。 研究成果報告書は、社会的責任問題の展開、社会的責任と責任動向、企業目的と社会的責任、社会的責任と企業レスポンス、社会的責任とコーポレート・ガバナンスという5つの章より構成されており、夫々において代表的論者の見解の整理・提示ならびに総合化が試みられている。それは、理論を基礎とした技術論としての社会的責任理論への接近を試みるものである。社会的責任に関する諸論者の学説・見解を、その学説史的整理を含めて、より完全な形で体系化・総合化したものを、単著の形で公刊の予定である。
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