研究概要 |
従来の日本的経営の中心的な柱を形成していた「企業グループ」、および「メインバンク・システム」などのコンポーネントが、このたびのバブル経済の崩壊とそれに続く未曾有の不況・景気後退に伴って、崩壊したことを、新制度派経済学、特にエージェンシー理論の見地から理論的に解釈した。これは、企業グループをはじめとする従来の日本的経営の諸コンポーネントがいかにエージェンシー・コストの削減に寄与していたかを明らかにする作業に対応して取りまとめられ、その成果は1998年6月に行われた、ドイツの経営学会第60会大会(ウィーン経済大学)で、報告者がドイツ語で発表することができた。この発表は、本研究のひとつの重要な中間報告の意味合いを持っていたが、それに対応するドイツ側のコンツェルンに関する分析は、なお続けている。これらについては、その一部は、今度は、報告者が新たに会員となったドイツの社会学会(Verein furSocialpolitik,Deutschland)の大会で発表できればと計画している。いずれにしても、日本とドイツでは、企業グループをなす制度、およびエージェンシー・コストや取引コストの削減にあたってそれらが果たす役割がまったく異なるため、それを理論的に明快にし、ざらに実証的に検証することは非常に難しく、今一つの時間を要すると思われる。 日独の企業グループの比較分析に必要なバックグラウンドにあたる膨大な文献や資料は、おおむね得られ、その完全な整理やとりまとめには未だなお時間を要するが、さらに作業を集中的に進めることにより、近々その日本語による成果の第1弾が公表される予定である。以下、本研究のコンポーネントたる小テーマごとに、学会発表や研究誌への投稿を予定している。
|