日独の企業グループの比較分析は、過去にも全くなかったわけではないが、一貫したフレームワークにより、理論的な分析を加えたり、それにもとづく実証研究を行った例は、ほとんど見られなかったのが実状である。本研究は、そのような過去の研究の隙間を有効に埋めることを目指してスタートした。ドイツのコンツェルンの研究にあたっては、過去そこでの銀行の果たす役割に注目し、金融資本や独占資本などの見地から、銀行の影響力の分析に集中しすぎて、その背後にある、より重要な要因を多少見逃してきたのではないかと思われる。本研究では、過去往々にしてたやすく主張されてきた企業グループ罪悪論には留意しつつも、そのメリットにも注目しながら分析を進めた。そして、結局はコーポレート・ガヴァナンスを中心とした、企業の利害集団へのフェアな成果配分が重要であるとの結論に達した。そこでのガヴァナンス・コストに関する議論にまず注目し、つぎに企業グループに対する批判を慎重に検討した。以上はできるだけエージェンシー理論をはじめとする新制度派経済学の考え方に基づいて、議論を進めた。さらに、コンツェルンに関する新制度経済学の手法による経済分析を進めた。そしてそのフレームワークによる実証分析を行うべくデータを収集したが、そのとりまとめを終えることはできなかった。なお、ドイツにしても日本にしても、その経営スタイルは特に最近大きく変わりつつあり、日本的経営の変貌の展望を、エージェンシー理論に基づいて行ったドイツ語論文(ドイツの学会で発表したもの)、および企業グループ内での銀行の役割をエージェンシー理論に基づいて行った英語論文を補論として添付した。
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