研究概要 |
本研究は、「企業の所有・支配・経営」というテーマのもとに、明治から現代までの100有余年間にわたる主要紡績会社を対象として、2つの目的をもって進めてきた。すなわち、(1)(a)「株式所有構造」、(b)「トップ・マネジメント組織」、そして(c)「財務データ」などの「経営データ」の統計化およびプログラムの開発を行うこと。そして、(2)大株主(各社トップ・テン)と経営者(取締役と監査役)の分析を中心にした個別企業の経営史的研究を進めることである。 現時点までのところでは,次のような諸点を確認することができた。 (1) 戦前期に関して、大株主の法人化現象は19世紀末から20世紀初頭を第一段階として始まり、第一次大戦末期以降に本格化し、定着した。また、大株主の持株比率は,企業の大規模化と共に減少し、戦間期にも漸減し、ほぼ20%前後で一定となるという紡績業での動向は、戦間期に大株主、とりわけ法人株主への所有の集中化が生じる財閥系企業との相違を指摘できよう。 (2) 戦後期に関して、全上場企業に見られる全般的傾向と比較して、主体別株式所有比率は、(イ)個人所有比率がかなり高いこと、(ロ)法人については、金融機関の所有比率は高く、事業法人が非常に低いという特徴がみられた。 以上の検討結果を踏まえ、大株主と専門経営者の実証研究を進めつつ、「日本型経営システム」の大きな特徴である「安定株主」の存在を明らかにし、さらに「取締役会」と「株主総会」に関する歴史的研究を加え、日本企業のガバナンス構造を明らかにすることが今後の課題である。
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