研究概要 |
本研究の目的は,バルブ崩壊後の日本企業における会計方法選択の要因と動機およびその実行に関するメカニズムを明らかにし、その経済的・会計的意味を究明することである。本年度は、まず企業の会計方法の実態と方法選択の動機を分析し、そこからいくつかの仮説を導くという一連の作業を行った。次年度以降では,この成果について各種の統計手法を駆使して検証を行い、企業の会計政策について実証分析することを予定している。 原価法か低価法かといったような会計手続選択行動の違いは,いったい何に起因するのであろうか。いま有価証券についてみれば,通常,収益性の高い企業と株主の影響力そして債権者の圧力が強い企業では,企業価値を最大化するために低価法が採用される傾向があるが,収益性の低い企業と株主の影響力や債権者の圧力が弱い企業では原価法が採用され,経営者に会計行動の裁量が留保されることがわかった。したがって,経営者の裁量的行動と利害関係者の利益の分配との関係について検討することが重要である。とくに,経営者の会計行動については,株式所有の集中と分散をめぐる企業のタイプとの関連を探るのが有益である。この点の調査と検討を現在進めている。 われわれが関心を持っているのは、バルブ経済が崩壊し始めた1990年以降の日本企業がどのような会計方針をとり、それをどのような動機に基づいて変更したかという点である。バルブ崩壊時のように大きな利益変動が生じる時には、企業は会計的裁量行動を採らざるを得ないと考えられる。ここでの調査研究を基に,理論モデルを検証し,今後,それを随時発表していく予定である。なお,経過的成果の一部として別記(11)の論文を執筆した。
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