研究概要 |
本研究の目的は,バブル崩壊後の日本企業における会計方法選択の要因と動機およびその実行に関するメカニズムを明らかにすることである。昨年度は、会計方法の実態と方法選択の動機を分析し、そこからいくつかの仮説を導くという作業を行った。本年度は、その仮説の正しさを追証するために内外の文献のサーベイを行うとともに、実証分析のために有価証券の評価方法などのデータベースを構築した。次年度は,この成果およびデータベースに基づいて一定の統計手法により検定を行い、会計方法を分析する予定である。 内外の文献のサーベイでは、2つの点について検討した。1つは、経営者の会計行動の説明要因として「エージェンシー理論」焦点をあてた研究を検討した。経営者の裁量行動には会計的裁量行動と実体的裁量行動があるが、わが国企業がとる「益出し」や「ウミ出し」は取引そのものを操作することによって利益数値制御を行う実体的裁量行動の典型である。そこで、日本企業の報告利益が会計手続選択にどう関わっているかエージェンシー関係から実証的に研究した論文を取り上げ検討し、課題を提示した。最近の会計研究は、報告利益を操作する経営者の裁量行動に焦点を当てて議論される傾向にある。そこでもう1つのサーベイとして、会計行動の説明要因として「利益平準化」に焦点をあてて関連する文献を取り上げ検討した。とくに、ここでは、報告利益管理についての問題を整理しつつ、利益平準化をめぐる理論研究をサーベイし、そして会計手続選択に関する実証研究を批判的に検討することによって、日本型企業に適応する仮説を模索している。これらの成果の一部が別記(11)の論文である。
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