研究分担者 |
長田 博文 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (20177207)
谷島 賢二 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (80011758)
俣野 博 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (40126165)
三村 昌泰 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (50068128)
楠岡 茂雄 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (00114463)
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研究概要 |
平成8年度は,1.流体力学極限,2.相分離と界面の運動方程式,の2つのテーマに関する研究を主に行った。 1.流体力学極限:流体力学極根とは,大規模な自由度をもつ微視的な系から出発し,巨視的なレベルを記述する種々の非線形方程式を導くという統計力学における最も基本的な問題をいう。d次元格子上に多くの粒子がばらまかれ,それらが適当な相互作用をして格子上を酔歩するモデルを格子気体という。このような系について,可逆性の下で,流体力学極限が既に証明されている。それは,確率論的には大数の法則として定式化される。そこで本年度は,このモデルの平衡揺動を考察した。つまり,系は平衡と仮定して対応する中心極限定理を証明したのである。極限で無限次元のOrnstein-Uhlenbeck過程が得られるが,その特性量は流体力学極限で得られた拡散係数と一致することが示される。これは物理でいうEinsteinの関係式,あるいは揺動散逸定理に相当する。 2.相分離と界面の運動方程式:ランダムな項がない場合に,偏微分方程式論における研究があるが,ここでは特にノイズを加えた揚合の影響を考察した。即ち,反応項が2つの安定点(2相)をもつような,ノイズの加わった反応拡散方程式を考えた。このような方程式に対し,反応項が大きくなるという特異摂動の問題を考えれば,方程式の解は時空の点ごとに,いずれかの相に近づく。従って,2相を分離するランダムな境界が現れる。ノイズは自己相似Gauss型であるとして,この境界の運動を考察した。更に,微視的な系から界面の方程式を直接得るために,実効的Ginzburg-Landau∇φモデルとよばれる界面モデルをとり上げた。巨視的スケール極限をとった後に,界面方程式として拡散係数が表面張力関数のHesse行列となるような非線形拡散方程式が得られることを示した。これらの結果を総合的に報告したのが,雑誌「数学」に掲載される論文である。
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