研究課題
基盤研究(B)
非双曲型の系は、位相的方法によってその系の性質を明らかにすることは困難である。そこで、測度論を用いて系の性質を見い出す方法が取られている。測度論を用いるとき、空間の次元が高い場合扱いが複雑であることから、2次元の空間上の力学系を対象にして研究を進めている。双曲型の系には、安定多様体と不安定多様体から成る2種類の葉層構造がアトラクターに導入される。この構造により、双曲型測度の存在が明らかになる。アノソフ系の場合には双曲型測度はSBR測度を成し、それによって系の力学的な性質が明らかにされる。そこで、非双曲型の場合に双曲型測度が構成されるかが問題となる。本研究では、アノソフ系によって近似される非双曲型の系を扱っている。よって、その系に対してC^1-ベクトル場が構成され、その積分曲線をもって安定多様体を構成している。ところが、系は非双曲型であるから、不安定多様体による葉層構造をC^1-ベクトル場から構成することは不可能である。そこで、双曲型の系による近似である状況を利用して、接空間の特殊な分解を用いて局所的に不安定多様体に類似なC^1曲線族を見つけ、C^O-ベクトル場の一意的な積分曲線であることを確認して、不安定多様体に類似な葉層構造を導入している。その葉層構造から双曲型測度が構成される。「この測度がSBR測度になり得るか」を調べるために、構成された不安定方向の葉層構造は有限個の非双曲的な周期点、または有限個の周期的であって伸縮しない弧の存在、を見い出している。これらの状況から構成された双曲型測度は決してSBR測度になり得ないことを示している。
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