研究概要 |
これまで想定してきた大マゼラン雲の固有運動と実際の観測値の間にはまだ微妙な差があるので,あらためて銀河系-大マゼラン雲-小マゼラン雲の三体系の軌道運動を追跡した.これを行うために,大小マゼラン雲が形成された時期から現在までの間,ずっと力学的に束縛された連銀河であるという条件を満たす軌道をすべて取り出すという作業から始めた.大マゼラン雲の軌道傾斜角を1°おきに88°〜92°まで,近銀点距離を1kpcおきに43kpc〜47kpcまでの合計25種類それぞれについて,小マゼラン雲の未知の2つの速度成分を8km/sおきに変えて,連銀河となる軌道が約450組存在することを求めた. この軌道の中でマゼラン雲流の形状と運動をよく再現するものを徹底的に探していく.これまでの研究では,大小マゼラン雲の銀河面は互いに平行で,銀河系の銀河面と垂直であるとの仮定をもうけていたが,ここでは小マゼラン雲の銀河面の向きをも様々に変え,大小マゼラン雲のあらゆる軌道の可能性を調べている段階である.これによって得られた軌道は,大小マゼラン雲が取り得た軌道として,その過去の相互作用が球状星団の形成や30Dor領域の巨大ガス雲の運動をよく再現するものを選び出していく.この段階で,大小マゼラン雲の軌道はほぼ確定されると確信する. 原始球状星団の発見は天文学・宇宙論の中で最も重要な発見の一つであり,生産性の高い研究成果の一つとなる.現在,世界でこのような原始球状星団のサーベイはなされていない.このサーベイを行うために,南半球にある光学・赤外望遠鏡に搭載する2次元赤外線検出器(256×256素子のInSb検出器)および周辺電子回路を製作中である.
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