日米共同研究で推進しているデジタル・スカイ・サーベイ(DSS)は、まだ試験観測段階で科学研究に仕えるデータは出ていない。そこで、(1)テスト用の人工データのシミュレーションを通じて、実際に観測が期待されるクエーサーの吸収線の統計精度を調べる、(2)現存の観測データを用いて、銀河ハロ-の進化と銀河間ガスの進化と背景紫外線輻射との関係を明らかにする研究を行った。 (1)については、現在予定されている波長分解能の範囲(R=λ/Δλ=3000)の範囲でも、吸収線系の進化や柱密度分布を十分精度良く議論することができることがわかった。さらに、DSSで得られる10万個のクエーサーのスペクトルから、銀河間雲の進化についてより詳細なモデルを作製できることを示した。 (2)については、銀河間ガスのG-Pテストから示唆されている背景紫外線輻射のスペクトルの変化を考慮して、炭素イオンで調べられている銀河ハロ-の物理状態と、ライマン・アルファの森を利用して調べられている銀河間雲の進化を調べた。その結果、銀河ハロ-はかなり早い段階で星形成過程で形成されること、銀河間の雲は、銀河間空間にランダムに分布して素早い進化をする成分と、ゆっくり進化する銀河に付随する成分の2成分が存在することを明らかにした。これらの研究から、背景紫外線輻射の強度変化、スペクトルの時間変化について重要な制限を得た。この知見は、今後、銀河ハロ-および銀河間雲の進化モデルを構築する上で重要な情報となるだろう。これらの研究結果は、いずれもレフェリー付きの欧文報告雑誌に発表し印刷公表されている。
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