研究概要 |
本研究の目的は,東北大学原子核研究施設(核理研)で完成した300 MeVパルスビームストレッチャー・ブースター(STB)を用いた,光子・パイ中間子生成反応による原子核スピン・アイソスピン状態の研究である.この実験は,ガンマ線の高分解能標識化と終状態に放出される中性子,ガンマ線を解析することによりこれまで行われてきた(γ,π)反応実験の問題点を克服することが目的である. 実験準備のため本年度は,使用するパイ中間子測定レンジテレスコープ検出器テストを行った.パイ中間子の測定は,16層からなるプラスチックシンチレーターで構成されており,検出器内で静止した後,崩壊時に放出される荷電粒子の信号をとらえ,パイ中間子事象を区別し,そのエネルギーはレンジおよびパルス波高で決定する.この方法により正・負電荷のパイ中間子を区別し分解能2MeVで測定することができる,このテレスコープのビームによるテストをKEK 田無・電子シンクロトロンを用いて行った,使用した制動輻射γ線の最大エネルギーは600MeVであった.この結果本レンジテレスコープは,低エネルギーパイ中間子識別に十分性能を発揮することが確認された. 平成10年度には,核理研STBにおいて(γ,π)同時計数実験を行うことであったが,現在のところSTBからのビームが実験を行える段階まで整備されていない.このため年度内に実験を実施することが出来なかった.検出器は完成しており,次年度以降早急に実験を開始する予定である. 平成10年度実績をまとめると, 1. γビームを用いたテスト実験を行い,検出器の性能を確認した. 2. 実験に使用するTagged光子実験ステーションの整備を行っており,検出器の準備は順調に進んでいる.
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