研究課題
基盤研究(B)
本研究は低エネルギーでのKNの強い相互作用の性質を調べようとするものである。強い相互作用はSU(3)対称性を基本とするQCDで記述されると考えられるが、そのカイラル対称性の破れのメカニズム等まだ理解しなければならない根本的問題が残ったままである。このため我々はKN相互作用の基本データを拡充するために軽いK中間子原子のX線精密測定を行っている。本研究代表者が実験責任者を勤めた文部省高エネルギー物理学研究所でのK中間子水素原子のX線の観測の成功を発展させるため本研究では現在建設中のイタリア・フラスカッティ研究所DAΦNE(Φ-ファクトリー)において水素ばかりでなく種々の軽い原子核におけるX線の観測をめざし準備を進めている。測定装置にはスイスの開発したCCDX線測定器を利用する。この測定器はΦ-ファクトリーのような理想的低エネルギーK中間子源には最適であり、高精度の実験が期待できる。本研究は日本・イタリア・オーストリア・スイスを中心とした国際共同研究であり、今年度日本は実験装置の設計・制作を行った。装置はオーストリアの研究グループと共同で装置の冷却加圧試験を行い7、予定性能を確認した。現時点ではDAΦNEは本年8月に稼働を開始する予定であり、それを待って本研究のデータ収集を開始する予定である。このまま順調に計画が進めば来年度中にもアイソスピンの分離など物理的にきわめて重要なデータの報告ができると期待される。