研究概要 |
核子当たり数10から数100MeVの中間エネルギー領域での原子核のクーロン分解反応の機構を精密な角度分布や、分解片の角度相関の高精度測定を通して研究した。具体的には、プラスチックシンチレータを真空槽に入れ、そこからの光をアクリル製の窓を通して大気中の光電子像倍管で検出する方式で大型真空箱を建設し、理化学研究所加速器研究施設の実験室に設置し、リングサイクロトロンからの重イオンビームによる実験を行った。真空槽の効果により、相対エネルギー0.5MeV以上では事実上バックグラウンドの影響を受けない測定が可能となった。 測定した系は、^<208>Pb(^8B,^7Bep)^<208>Pb,^<208>Pb(^9C,^8Bp)^<208>Pb反応である。実験の本来の目的は、天体における核燃焼過程を構成する放射性捕獲反応^7Be(p,γ)^8B、^8B(p,γ)^9Cの断面積を決定することであり、最初の反応は、高エネルギーの太陽ニュートリノを生成し、次の反応はhot pp chainと呼ばれる高温高圧下の水素燃焼過程の鍵をにぎる。クーロン分解法では、一段階E1遷移を仮定して解析するが、わずかに混じるE2成分の効果が問題であった。我々は、クーロン分解反応の角度分布(つまり終状態のP-^7Be系の放出角度の分布)がE1遷移とE2遷移で異なることに注目した。実験は、測定器が散乱角にして約10°までを覆うような配置で行われ、角度分布の全容を測定することに成功した。結果の解析から、E2遷移の成分は非常に小さく、事実上無視できる程度であることが得られた。また、この解析を通してE2遷移の場合は対応するl=2(lは角運動量移行)の核力による遷移が無視できないことがわかった。
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