研究概要 |
低次元電荷移動錯体テトラチアフルバレン-クロラニル(TTF-CA)やポリジアセチレン(PDA:CR-C≡CR′_n;R,R′は側鎖基)の単結晶においては、微弱な励起光照射による極く少数の荷電担体の注入をきっかけとした永続的相転移や過渡的相注入の発生が、各種光学スペクトルの測定によって確認されている。今年度、本研究では、フェムト(10^<-15>)秒パルスレーザーを用いた時間分解反射分光法によってTTF-CAにおける光誘起N-I相転移のダイナミクスを探究した。その結果、相転移が500-700psかけて進行すること、相転移進行のためには励起強度に域値が存在しその強度は2000DAペア-に1励起光子と非常に微弱なものであることが明かとなった。さらに、ナノ秒のパルス幅を持った励起光の場合には見つからなかった、中性相からイオン性相への転移がフェムト秒パルス励起光を用いることで発見に成功した。これらの成果によって、光誘起中性-イオン性相転移がレーザー励起による温度効果ではなく、光励起状態を経由したフォトンモードによって発生していることが明らかとなると同時に、相転移の転移温度周辺での相境界壁の挙動を探ることに成功した。また今年度は、光誘起相転移に関して得られた知見を基に光磁性転移等の新しい光誘起相転移系の可能性を探るために、SQUID帯磁率測定装置とレーザーを組み合わせた光磁性測定装置の作製も行なった。そしてMnをドープしたIII-V族磁性半導体薄膜を中心に光磁性転移発現の可能性を探るための予備的実験を行った。
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