研究概要 |
本研究の目的は以下の2点であった。[1]ピコ(10^<-12)>・フェムト(10^<-15>)秒パルスレーザーを用いた時間分解分光法によって光誘起相転移のダイナミクスを探求し、ドメイン成長の様子を探る。[2]さらにこの超短パルスレーザーシステムをさらに発展させ、電子励起状態の選択と相転移ダイナミクスの関連を探ること、並びに磁気的測定装置と組み合わせて光磁性転移等の新しい光誘起相転移系の可能性を探ること。 以上の目的を達成するために以下の研究を行った。 (1)作製した波長可変超短パルス光源を用いて、光励起状態の選択による相転移ダイナミクスの違いを検討した。試料は、前年度の研究で光誘起中性-イオン性相転移を起こすことが分かっている、TTF-CAを用いた。その結果、中性->イオン性、イオン性->中性の双方向の相転移が、100フェムト秒のパルス光励起によって引き起こされること、また相転移効率が励起光強度に対して域値特性を示し、その値が1000-1500DAペア-当りに1個の励起光子という極端に小さなものであることも明かとなった。この様な特徴は、本物質に内在する強い電子間相互作用に起因しているもとの考えられる。 (2)波長可変レーザーと磁性測定装置を組み合わせた独自の測定装置を用いて、III-V族希薄磁性半導体における光磁性効果の検討を行なった。その結果、MBE法を用いて作製された(In,Mn)Asにおいて、光注入キャリヤ(ホール)によって強磁性状態が誘起されることを初めて確認した。これによって、光誘起相転移が無機、有機物に広く存在する普遍的現象であることが分かった。
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