研究概要 |
平成8年度は以下の研究成果を得た。 (1)グラファイト微小結晶(直径20Å程度)にLiが過剰に吸着する機構を、同系での電子状態計算を用いて解明した。これはLiをグラファイト層間化合物(GIC)の場合の初期配置から初めて、半経験的量子化学軌道計算(PM3法,UHF)で最適化構造を求め、その構造に対する電子状態の結果から、Liが過剰に吸着する「余地」がどこにあるかを調べるものである。その結果、Liがグラファイト微小結晶の端が水素終端されている場合には、GICの様に電荷を移動させたイオン結合としてつくことが分り、これが過剰に吸着する仕組みになっていることを明らかにした。 (2)カーボンナノチューブ(CN)の振動構造を計算し、結合分極近似でラマン強度を、CNの半径と螺旋度の関数として計算した。phonon分散関係は、2次元グラファイトの力のテンソルを回転することでCNの結晶構造の対称性を正確に反映した力の定数を得た。この結果、とくに低振動数のphonon構造を正しく得ることが出来た。得られたphonon構造からラマン強度を計算し、主に主要なラマン強度は、半径のみに依存し螺旋度には依存しないことが分った。
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