我々はカーボンナノチューブやグラファイト微結晶のようなナノメータの大きさを持つ新しい炭素材料の立体構造の設計を行ない、その物性を計算してきた。 平成9年度の主な成果は、(1)カーボンナノチューブのラマン効果を結合分極近似で、螺旋度と半径の関数として計算した。計算結果は、実験における多くのラマンピークの起源とカーボンナノチューブの構造の同定に貢献した。(2)カーボンナノチューブの輸送現象において、2種類の炭素原子サイトに等価に広がっている散乱ポテンシャルによって電子が散乱を受ける場合には、後方散乱が干渉効果によって消失することを、マイケルベリ-が1984年に提案して波動関数の幾何位相によって説明した。 また本研究を推進するにあたって、分子軌道計算における時間のかかる行列の対角化を効率的に計算するLSIの設計を ハードウェア記述言語を用いて行なった。プログラム可能ゲート配列(FPGA)LSI素子上で動作を検証する為の基盤を製作した。この基盤上での動作特性の実験は未だ行なっていない。今後の課題である。
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