表面および超微粒子の局所物性の測定を目的として、STM像、発光像およびSTSの3種類の同時測定が可能な、ナノメータスケールトンネル発光2次元像測定装置を製作した。特に今年度は、この装置の発光集光効率を10倍程度高めるために、集光系を中心にSTM装置の改良およびSTM装置を搭載する真空装置の製作を行った。これらにより、STMによる幾何学構造と発光像を直接比較することができ、発光機構と構造の詳細な関係を研究するとができるようになった。これはわが国で初めて実現されたものである。さらに、発光スペクトルの2次元空間マッピングも可能となり、その強度の2次元像すなわちスペクトル分解トンネル発光像を得ることにも、世界で初めて成功した。これを用いて貴金属(Au、Ag)微粒子薄膜におけるトンネル発光像を測定した。この結果、発光スペクトルは表面幾何学構造に依存することを確認した。発光波長が短波長腸(600-700nm)では微粒子の分布によく対応した発光分布像が観測されたが、発光波長が長波長(700-800nm)では微粒子分布と異なる発光分布像が観測された。このことは、微粒子の幾何学構造あるいはスケールに依存した異なる発光モードが励起されていることを示している。また発光強度は全体的に微粒子の形状(高さ)に強い相関を示すことが観測された。これは、トンネル電子によりSTM探針と試料の間に誘起された振動ダイポールの方向がSTM探針位置に依存して変化し、それによる発光強度変化が微粒子の高さにほぼ比例することにより説明された。今年度は金属微粒子を中心に測定したが、次年度以降は、金属微粒子とは異なる発光機構を有する半導体微粒子に対して測定し、そのナノメータスケールでの局所発光特性、局所物性を解明する予定である。
|