表面および超微粒子の局所物性の測定を目的として、STM像、発光像およびトンネル発光スペクトルの同時測定が可能な、ナノメータスケールトンネル発光2次元像測定装置を製作した。光検出器として、高感度の光検出器(CCD)をシステムに導入し、発光スペクトルの空間分布を測定できるようにすることにより、第一に、ナノメータ・スケールで空間分解した発光スペクトルの測定、第二に発光スペクトルの特定波長の光に対してフォトン像の測定を行った。これらの測定を用いて、蒸着法により自己組織的に形成される金属微粒子系に対してトンネル発光空間マッピングを測定することにより、ナノメータ・サイズ量子系の発光機構を明らかにすることを目的とした。 これらの測定は真空中のみならず液体中でも可能となった。真空中の測定では、金微粒子の局所プラズモンによる発光が、微粒子の幾何学構造に対応して発光スペクトルが依存することを示した。このことより、トンネル発光の原因となる表面局所プラズモンのスペクトルはSTM探針および表面微粒子の幾何学構造によってきまることが明らかとなった。発光強度分布のコントタストと表面トポグラフィーの関係について理論解析を行い、コントラストはトンネル誘起ダイポールの角度変化により説明できることを示した。また、発光は微粒子の表面状態及び微粒子の種類にも依存することが示され、このトンネル発光像測定法は表面の化学分析にも有用であることが示された。 液体中の測定では、用いる液体である有機溶媒の誘電率が小さいジオキサンにおいて発光が観測されそのスペクトルを測定した。この発光スペクトルは液体の存在のため、局所プラズモンのエネルギーが減少し発光スペクトルが真空中の結果と較べて長波長側にシフトすることを観測した。トンネル発光スペクトルの理論的解析も行い、金属微粒子の発光スペクトルの粒径および液体媒質依存性を求めることができるようになった。
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