K_2CuF_4とLa_2CUO_4とはどちらもK_2NiF_4型の結晶構造を持ちながら、前者は強磁生体、後者は反強磁生体である。本研究代表者はK_2CuF_4とLa_2CuO_4との結晶構造や格子定数、さらに各原子間の距離などを比較して、次のような現象を予想した。即ち、K_2CuF_4に圧力Pをかけると、c-面内のCu-Cu間の距離は縮まり、ある圧力Pc以上ではCuF_6-八面体はその長軸をc-面内に保てなくなり、c-軸上のCu-F間の距離が延びて新たな長軸、またc-面内のCu-Fが短軸となり、見掛け上CuF_6-八面体の長軸がc-面内からc-軸へ回転して、軌道整列がLa_2CuO_4のそれと同じになるのではないか。もしそうなれば、K_2CuF_4の交換相互作用はもはや強磁性ではあり得ず、La_2CuO_4と同様に反強磁性になると考えられる。以上に述べた研究の動機に基づいて、高圧下におけるK_2CuF_4の磁性および結晶構造の変化を実験的に追求することを本研究の目的とした。 前記した予測の下に、K_2CuF_4の高圧下における磁化率の温度依存性を測定を行ったところ、約10GPa(100kbar)で強磁性から反強磁性への転移を確認した。この磁気転移は圧力によって前に述べた軌道整列の変化が起こったために引き起こされ可能性を強く示唆している。この圧力誘起磁気転移と結晶構造の変化との関係を調べるために、高圧下でのX線回折実験を行ったところ、10GPa前後でAFDOOからFDOOへの変化を裏付ける明白な構造転移を発見した。またphonon-Raman散乱の実験でも、10GPa前後でAFDOOを特徴づけるCuF_6八面体の歪みから生じる散乱線が消失する事を確認した。この事実はAFDOOからFDOOへの転移を裏付けている。
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