常流動および超流動ヘリウム3表面上のウィグナー結晶の伝導率を測定しそれを理論的に解明した。 ヘリウム液面上のウィグナー結晶は電子が3角格子を組んだ2次元結晶で、各格子点の下には液面の小さなへこみが形成される。このへこみが動くと、液体ヘリウム3中の準粒子を散乱して抵抗をうける。この抵抗を定量的に計算することで、ヘリウム3表面上のウィグナー結晶の伝導率を説明できることがわかった。 温度が高いときにはヘリウム3中の準粒子間の散乱平均自由行程が十分に短いために粘性流体として振るまう。フェルミ流体の粘性率は温度の2乗の逆数に比例して低温になるほど増大するので伝導率は粘性に逆比例して温度とともに下降する。温度が下がり、準粒子間の平均自由行程がウィグナー結晶の格子間隔よりも長くなると伝導率は飽和して温度に依存しなくなる。さらに低温では、ヘリウム3が超流動状態になるので準粒子の励起スペクトルに変化が生じることによって伝導率の温度依存性に異常が現れることが自然に導かる。この理論的解釈は実験事実とよく一致する。 本研究では超流動ヘリウム3のB相について実験をおこなったが、超流動ギャップに異方性をもつA相での実験を行う必要がある。
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