研究概要 |
1.スピネル型銅硫化物CuCo_2S_4-CoCo_2S_4の磁性と超伝導に関するNMR研究 (1)Cu-rich側の化合物において、常伝導状態における核スピン格子緩和率が超伝導転移温度に近づくに伴い増強されることから、超伝導転移温度の上昇と反強磁性スピンゆらぎの増大の間に強い相関があることを示した。(論文2編) (2)Co-rich側の化合物に対する高磁場中での精細なNMR研究により、この系の磁性の本質が遍歴型弱反強磁性(CoCo_2S_4のネ-ル温度:55K,CuCo_2S_4:20K)であることを明確にした。(論文投稿準備中) (3)CuCo_2S_4における超伝導波動関数の対称性を明らかにするためには、核スピン格子緩和率の温度依存性を転移温度(4.0K)より十分低温まで測定する必要がある。このため、吸着型ヘリウム3NMRクライオスタット(到達最低温度0.28K)を整備完成させた。予定通り次年度始めに測定を開始する。 (4)超伝導転移温度の圧力による降下の原因を微視的に調べる目的で、低温下で圧力可変型の高圧NMR装置を設計発注し、現在納入された装置の性能テストを行っている。予定通り次年度に本実験を開始する。 2.スピネル型銅硫化物CuV_2S_4の構造相転移と磁性に関する研究 この化合物が示す90Kでの物性異常は、3次元物質であるにも関わらず従来は「電荷密度波の形成に伴うフェルミ面の部分的消失に起因する」と云うことが定説となっていた。 今回、高磁場中での詳細なNMR研究により、8面体サイトのバナジウムイオンは低温正方晶ではスピン1重項基底状態により、90Kでの構造相転移に伴う高温正方晶ではスピン3重項励起状態への熱励起により弱磁性が現れていることを明快に示し、従来の定説を否定した。(論文1編)
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