研究概要 |
銅スピネル化合物CuB_2X_4は、X=0では強磁性または反強磁性絶縁体、X=Seではパウリ常磁性金属あるいは超伝導体である。他方,X=Sの場合、S原子のもつ中間的な原子半径から多様な物性の発現が期待されるが、良質な試料の合成が困難であったため、これまでに詳しい実験研究は殆ど行われていなかった。 本研究では、最近になって良質な銅スピネル硫化合物の合成に成功した愛媛大学の宮谷研究室から試料の提供を受け、その電子・磁気状態をNMRにより系統的かつ微視的に研究した。その結果、CuB_2S_4中の酸素八面体中心のBサイトの遷移金属を変えることにより (1)CuCo_2S_4では、s波超伝導と四面体AサイトのCuに起因する弱反強磁性との共存 (2)CuV_2S_4では、高温立方晶一低温正方晶転移や、高温立方晶におけるBサイトのV^<3+>イオンのスピン一重基底状態と三重項励起状態間の熱励起磁性 など、多様な物性の存在とその発現機構を明らかにしてきた。また、 (3)CuTi_2S_4では、BサイトのTi^<3+>イオンのd電子間の弱い反強磁性相関と低温での長距離磁気秩序を見いだした。 今後、CuCo_2S_4の高圧力下でのNMR実験により、その電子・磁気状態への圧力依存性を微視的に調べ、超伝導と遍歴型反強磁性との関わりの本質をより明らかにしていく。また、CuTi_2S_4では、約4K以下で見いだされた磁気秩序化の機構を明らかにする目的で、より精細なNMR実験と低温比熱、帯磁率測定を行っているところである。
|