小さな分子の内殻励起における異方性と緩和ダイナミクスの研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08454108
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 上田 潔 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (50151791)
• 研究分担者: 奥西 みさき 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (80224161) ; 大森 賢治 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (10241580)
• キーワード: 内殻励起 / 電子-イオン同時計測 / 三ふっ化ホウ素 / 大フッ化イオウ / オージェ電子分光 / フロンガス / イオン分光 / ホスフィン

研究概要

BF_3のB:1s内殻光イオン化領域における光電子角分布と解離生成イオン(光イオン)の角分布,BF_3分子のF:1s励起領域での光イオン角分布,およびSF_6分子のF:1s励起領域での光イオン角分布の測定結果を解析し、3報の論文として発表した。
昨年度試作した、エネルギー分析した2個の荷電粒子の間の同時計測を行うための装置の改造を行った。具体的には、150度半球面セクター型分析器1台と電場阻止型分析器2台1組を製作し、そのいずれかを先に製作した150度半球面セクター型分析器と共に用いることができるようにした。
2keVの電子ビームを励起源としてN_2分子を2重イオン化し、解離生成する2個のN^+イオンを150度半球面セクター型分析器2台の組み合わせ、および150度半球面セクター型分析器と電場阻止型分析器との組み合わせで観測し、同時計測による2個の荷電粒子のベクトル相関(エネルギー相関と角度相関)の測定が本装置で可能なことを確かめた。本装置の詳細と性能は電子分光国際会議で発表し、J.Elec.Spectrosc.に投稿して受理された。
来年度に行う予定の実験データ解析の準備として、昨年度購入したコンピューターに分子軌道計算用ソフトをインストールし、以前に観測したPH_3分子の共鳴オージェスペクトルの解析に用いた。その結果もまた電子分光国際会議で報告し、J.Elec.Spectrosc.に投稿して受理された。
150度半球面セクター型分析器を用いてCF_3C1、CF_2C1_2、CFC1_3、CF_3CN分子の電子ビーム励起オージェ電子スペクトルを観測し、この分析器がエネルギーの高いオージェ電子観測にも適していることを確かめた。オージェ電子スペクトルの理論解析も行い、現在投稿準備中である。
動作試験を終了した装置を物質構造科学研究所放射光実験施設に搬送し、この3月10日より放射光を用いた実験を行う。

研究成果

• [文献書誌] Shimizu, Ueda et al.: "Angle-resolved photo electron and・・・ photoion study on the shape resonaneein" J.Chem.Phys.107・7. 2415-2418 (1997)
• [文献書誌] Shimizu, Ueda et al.: "Symmetries and dissociation dynamics of Fls core excited states of BF_3" J.Chem.Phys.107 7. 2419-2423 (1997)
• [文献書誌] Ueda, Shimizu, et al.: "Correlation between core-hole palarization and localized bond rupture・・・" Phys.Rev.Lett. 79・18. 3371-3374 (1997)
• [文献書誌] Shimizu, Nagao.Ueda et al: "Apparatus for studying decay and dissociation of core excited molecules" J.Elec.Spectrosc.Relat Phenom.(in press).
• [文献書誌] Ueda, Muramatsu, et al.: "Electron emission from PH_2 produce via fast dissociation of core-excited PH_3" J.Elec,Spectrosc.Relat.Phenom.(in press).
• [文献書誌] K.Ueda: "Decay and dissociation dynamics of core-excited polyatomic molecules" J.Elec.Spectrosc.Relat.Phenom.(in press).