本研究課題は、相転移ダイナミックスの考え方が、ゾルゲル転移という現象についても統一的に理解ができるかという問題意識が基礎となっている。それを具体化していく第一歩として、ゾルゲル転移点がどこまで精度良く決定できるか、その最適の方法を調べることを今年度の計画とした。本年度の研究概要は(1)ゲル化の反応進行度を定量的に押さえることが可能な放射線重合によるゲル形成プロセスの解析、(2)ゲル形成能をもつ高分子多糖の精製、(3)疎水性の可逆ゲルをつくるポリマーのキャラクタリゼーション、(4)ゲル化進行過程での緩和モードの分布の変化の追跡のための測定解析システム、とまとめられる。(1)については、γ-線による重合反応をもちいた直鎖高分子溶液からのゲル化過程を静的、動的光散乱により追跡、解析した。いくつかの濃度での測定結果より、高分子溶液系で考えられているサイト-ボンドーパーコレーション的な「相図」を見いだした。また、静的な強度測定では転移点がうまく見いだせない(明瞭な異常が現れない)こと、エルゴード性の変化は転移点にうまく対応すること、そして、動的な相関関数測定ではパワー則がゲル化点に特徴的に出現すること、が確認できた。これらは、架橋形成が共有結合による化学ゲルであるが充分に平衡系に近い形で進行する場合には物理ゲルと同等に考えて良いことを意味する。また、連結性の発散としてゲル化を見た時、系内の緩和プロセスの解析が特に重要であり、静的測定だけでは不十分であることが明らかとなった。からみ合い系の場合、この点が特に重要となる。(2)、(3)は、次年度での詳細な解析のための準備としての資料精製、直鎖高分子の特性解析であり、HPMCについてその基本的特徴がおさえられつつある。(4)は、今年度購入した相関数を解析システムに組み込むことにより緩和プロセスの解析のシステムを計算機ソフトを含め確率させた。
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