当該研究期間、電磁流体複雑系においては、電場、回転運動、圧縮性が輸送抑制機構と密接することを確認した。本研究課題で得られた成果は以下のようにまとめられる。 (1)トカマクプラズマの高モード閉じ込めにおいては、プラズマ外辺の電場、特にその曲率が輸送抑制と深く関係することを統計理論的方法で示し、観測結果と一致することを確認した。電場曲率の重要性は、電場勾配を最重要とする従来の研究と大きく異なる点である。 (2)圧縮性による乱流抑制に関連して、平均密度で規格された密度分散と乱流マッハ数の重要なパラメーターとなることを統計理論的に示し、これを異なる速度で流体が混合する、いわゆる乱流混合層で定量的に示した。また、音波に関連した密度揺動とエントロピー変動より生じるそれとを分離することによって、圧縮性効果をさらに精密に議論できることを統計理論的手法をで示した。 (3)プラズマの回転運動と磁場を結び付ける量として、乱流クロスヘリシティの概念を導入し、帯域的回転運動ないし系の回転効果から帯域的磁場構造が発生することを示し、この機構が電磁流体での乱流輸送抑制と密接することを確認した。特に、トカマクプラズマでの回転による乱れ抑制、高密度星を取り囲む降着円盤における磁場および双極ジェット生成等において、これを定量的に確認した。 以上に見るように、本研究課題ではいくつかの重要な概念を提案し、実験ないし観測結果と照らし、その重要性を示した。
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