電子と原子分子との散乱により放出された電子の、エネルギーと散乱角(放出角)を同時計測法を用いて測定すると、標的の電子軌道に関する運動量空間の情報を得ることができる(電子運動量分光法)。従来これを表面界面の分析法として応用した例は極めて少なかったが、独自の電子分光器と信号処理系を開発することにより、表面分析法として実現させるのが本研究の目的である。 このための、試料表面から散乱された電子のエネルギーと散乱角を弁別するための疑似半球型電子分光器を本年度新たに製作した。信号の検出には既存の位置敏感型検出器を流用し、電子分光器に取付けた。 本研究に用いる実験装置としては、電子銃、電子分光器、低速電子回析装置(LEED)、試料マニピュレータなどを組み込んだ既存の真空装置を転用した。この真空装置の排気系として新たに真空排気ポンプを購入した。またLEED観察用に冷却CCDカメラを購入した。 本研究における電子分光器は数多くの安定化された直流電圧を供給して動作させるため、専用の高精度電源が必要である。このため本年度はコンピュータ制御の可能な分光器専用電源を製作するとともに、制御用のプログラムを開発した。
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