研究概要 |
古地磁気永年変化(paleosecular variation,PSV)研究の目的は,古地磁気学から得られる情報に基づいて,100-1000万年程度の長期間での地球磁場の平均及び変動の特徴を明らかにすることにある.古地磁気データは(1)誤差が大きくまた地域的にも偏っている,(2)方向(伏角,偏角)の測定が主で完全な情報ではない,(3)個々のデータが対応する時間がそろっていないなど,現在の磁場観測データとは全く異なる問題点を内包している.従来の研究ではこれらの問題点が正しく認識されておらず,結果の解釈にも任意性がつきまとっていた.研究代表者は磁場の諸成分を軸性双極子磁場からのずれで表現する手法(テーラー展開法)を開発し,この手法で前記のような問題点が統計的取り扱いによって乗り越えられることを示した(Kono and Tanaka,JGG,1995). この科学研究費補助金による研究期間内には,この方法を(1)磁場強度と双極子強度の分布(Kono and Hiroi,EPSL,1996),(2)伏角と偏角の分布(Kono,JGG,1997),(3)古地磁気方位と極の分布の形(Kono,PEPI,1997)にそれぞれ適用し,双極子に次いで(2,1)の関数がPSVにとって重要であることを明らかにした.更に,古地磁気のように非線形データの場合,一般にデータの平均値に基づくインバージョンからは平均的なモデルは得られないこと,このような問題点を持たない古地磁気強度データによって球面調和関数展開が可能なことを示した(Kono,Tanaka and Tsunakawa,JGR,投稿中).これらの研究により,PSVの順問題的なアプローチは終り,本格的なインバージョンに進む段階に到達した.
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