研究概要 |
兵庫県南部地震(M=7.2)の震源域に設置されている地殻変動の観測点(六甲高雄、六甲再度、六甲石楠花、および六甲鶴甲)の観測が継続実施されてきた。この内、六甲高雄は万福寺断層が、六甲鶴甲は大月断層が観測坑道を交差している。 本年度は、簡易ボーリング機が購入された。今まで、六甲高雄では、観測坑道の側溝を流れる湧水の量変化の測定が行なわれている。そのため、その観測にはノイズも多い。ノイズが少ないと思われる地下水の水位変化の測定を行なうため、坑道内にボアホールの掘削を始めたが、破砕度が大きく、良好な水位観測用のボアホールはいまだ完成せず、来年度への継続である。各観測点での地殻変動観測ならびに湧水量観測は継続されてきた。六甲高雄と六甲摩耶における水準測量は、例年通り3月に実施された。また、六甲活断層帯と一連のものと考えられる兵庫県南部地震の地震断層である野島断層に掘削された。800m孔からの湧水量の測定が行なわれている。六甲高雄の湧水量変化と比較するために、高精度の湧水量測定装置を制作・設置し、12月から観測を開始した。 本年度の解析で得られた重要なことは、大月断層の変動に関してである。六甲鶴甲の観測結果は、地震に伴う最大4×10^<-4>strainの歪と最大8.7mmの高さの変化は認められたものの,地震発生を予想させるような短期と直前の変化は観測されなかった。長期的に見れば,地震までの歪速度の減少と主歪方向の回転,そして観測坑道北端の約0.1mm/年の隆起が生じていた。しかし、地震後は、大月断層が約0.1-0.2mm/年で動いていると考えられる。運動は右ずれ・北西側隆起であり,大月断層の第四紀変動ならびに地震断層の変位と同じセンスである。地上の断層の変位が,地下の地震断層の変位による歪を解放しているものと思われる。
|