研究概要 |
1995年兵庫県南部地震(M=7.2)の震源域に設置されている地殻変動の観測点(六甲高雄、六甲石楠花、および六甲鶴甲)における地殻変動連続観測が実施されてきた。この内、六甲高雄は万福寺断層が、六甲鶴甲は大月断層が観測坑道と交差しており、六甲高雄では万福寺断層の破砕帯からの湧水量変化の測定も行なわれてきた。本研究において、地震後の観測を継続すると共に、データ解析が行われた。 1)六甲鶴甲の観測結果は、兵庫県南部地震に伴う最大4×10^<-4>strainの歪と最大8.7mmの高さの変化は認められたものの,地震発生を予想させるような短期と直前の変化は観測されなかった。長期的に見れば,地震までの歪速度の減少と主歪方向の回転,そして観測坑道北端の約0.1mm/年の隆起が生じていた。しかし、地震後は、大月断層が約0.1-0.2mm/年で動いていると考えられる。その運動は右ずれ・北西側隆起であり,大月断層の第四紀変動ならびに地震断層の変位と同じセンスである。地上の断層の変位が,地下の地震断層の変位による歪を解放しているものと考えられる。 2)地震時にステップ的な地殻変動が生じた後、時定数の比較的長い変動が観測されることがあり、余効変動と呼ばれている。このような変動が生じる原因として、震源断層付近で進行するゆっくりとしたすべりや地震時変動に対する地殻の粘弾性応答などが、従来、考えられてきた。本研究において、地震による間隙水圧の変化が地下水の移動によって解消されることに伴って余効変動が生じると考えるに至った。すなわち、間隙水圧は、地震時に、コサイスミックな歪変化に対応して変化が生じ、縮みの領域で増加、伸びの領域で減少する。生じた間隙水圧の不均一な空間分布は、それらの領域の透水性に左右されるが、領域間の地下水の流出入で解消する方向に向かうであろう。
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