研究概要 |
1 各種大気観測データを用いた対流圏・成層圏間物質輸送の解明 南極昭和基地上空の対流圏上部でオゾンが増加した事例についてバックワードトラジェクトリ解析を行った結果、多くの場合、南極氷床上の成層圏から圏界面を下降してきたものと判明した。 100hPa面を横切る南北両半球中高緯度の下向き質量フラックスについて10年間のデータに基づき力学的解析を行い、季節変動の他にQBO及びピナツボ火山によるシグナルを検出した。 2 力学モデルを用いた低気圧発達に伴う物質輸送・混合過程の再現とその理論的解釈 傾圧擾乱との相互作用により作り出される平均帯状流場の基本場依存性を調べるため,対流圏と下部成層圏を表現する準地衝風βチャネルモデルにおいて、基本場として様々な放射平衡場を仮定し長時間積分を行い準平衡状態を求めた。この結果をもとに、傾圧擾乱が準平衡状態を維持する機構に関する基礎的な解析を行った。また、この準地衝風モデルでの物質輸送を表現するためパッシブスカラーモデルを開発し、その予備的実験を行った。 3大気大循環モデルを用いた成層圏・対流圏間の物質輸送交換過程の解明 放射吸収物質として水蒸気だけを含んだGCMを用いて中層大気に現れる擾乱の解析を行った。このモデルの赤道域において2-grid noise的な擾乱が現れる。この擾乱はσ=0.001付近から顕著となり,上層にいくに従い振幅が増大する。また,3-4日の周期を持つ。温度と南北風の位相関係から,慣性不安定により発生したものではないことが確認された。鉛直伝搬する赤道波であると考えられるが,ケルビン波ではなく混合ロスビー重力波に近い特徴を持っている。
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