研究概要 |
【野外観測】 96年8月にヘリコプターとラジオゾンデによる野外観測を行った.ヘリコプターには気温・湿度および放射温度の測定器を搭載し、早朝と午後に東京湾,埼玉県幸手市および鹿島灘を結ぶ線をそれぞれ往復2高度で観測した.またゾンデはつくば市と都内で原則として3時間おきに放球した.北東気流が卓越する夏の日の関東平野における混合層高度の分布と水蒸気分布および時間変動が得られた.洋上の大気が関東平野に上陸後,気団変質によって温度・湿度がどのように変化するか,詳細なデータが得られた. 【レーダデータの解析】 典型的な夏型の多かった94,95の両年の7月と8月に東京管区気象台で観測されたレーダのデジタル出力を解析し,夏型日における降水の空間分布と日変化を調べた.その結果,午後になると,山岳部で降水頻度が増し,降水頻度の分布パターンは午後遅くなるほど水平規模の大きな地形と良く対応すること,日没後に関東平野の縁辺部で降水頻度が特異的に高まることがあることが示された. 【数値モデル】 3次元の高分解能(格子間隔5.3KM)の数値モデルで,典型的な夏型日の中部関東地方における可降水量の日変動にかんする数値シミュレーションを実施した.結果はレーダによる降水頻度の分布と良く一致した.これは,主として地表面に起伏による局地循環が大気下層の水蒸気を輸送することにより,降水頻度の日変化が決定づけられていることを示唆している.
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