【野外観測】 97年7月に山梨県塩山市の一ノ瀬高原にて、ラジオゾンデ観測とGPS受信機による可降水量の時間変動の解析を実施した。GPS受信機はGPS衛星からの電波の到達時間を正確に測定し、受信機の正確な位置を算定する仕組みであるが、このとき大気中の水蒸気により誤差が生じる。逆にこの誤差を解析することにより、大気全層で積分した水蒸気量(可降水量)が観測できる。ゾンデ観測との比較では、GPS受信機は高い精度を持っていることが示されたが、日変化を伴う傾向誤差がある可能性も明らかになった。この誤差は可降水量の日変化を研究する上では障害になる可能性がある。 【国土地理院のGPSデータの解析】 国土地理院が設置している関東中部地方におけるGPS受信機データを集め、気象データと併せて、可降水量の日変化空間分布を調べた。気象庁のルーチンゾンデ観測と比較し、上記の日変化を伴う誤差の性質を詳しく調査した。また寒冷前線が通過する時の、可降水量分布に変動とアメダスによる降水量の変動を比較検討した。その結果、前線が中部山岳地域を通過するとき、可降水量の大きな領域は日本海側から太平洋側に向けて速やかに進行するにもかかわらず、降水域はかなり遅れて太平洋側に移動することが明らかになった。 【数値モデル】 降水プロセスを含む2次元の高分解能の数値モデルで、典型的な夏型日の大規模山岳周辺に発生する局地循環による水蒸気輸送と降水の時間変化をシミュレーションした。この結果、山岳地域の中央部では15時ごろに降水が降りやすいこと、弱い一般風がある場合、山岳地域のかざしも側で、日没後に降りやすいことが示された。これらは昨年レーダー解析で明らかになった中部関東地域の局地的降水の時間変動パターンと定性的には一致している。
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