1.全球規模の地上・高層観測、積雪、海面水温、海氷に関する長期間のデータを用いて、1988-1989冬を境にした十年規模変動の構造を解析した。この時期を境に北半球中緯度に高気圧偏差が、高緯度域に低気圧偏差が強まる。さらにヨーロッパから東アジアにかけて大規模波状の偏差が現われる。この変動に伴って、太平洋、大西洋の中緯度海域の海面水温が上昇している。また、大西洋極域の海水も変化している。 過去データからこの変動は約10年程度の周期を持って変動していることが明らかになった。また、衛星による積雪面積のデータから、この変動にはユーラシア大陸東部の秋の積雪面積変動が大きく関与していることがわかった。 2.以上の観測データ解析から得られた積雪の影響を評価するために、大気大循環数値モデル(GCM)を用いた数値実験を行った。1988年の秋に対応してモデルでユーラシア大陸東部の雪の量を減らした実験を行ったところ、観測と同様な中・高緯度で逆符号を持つ偏差分布が得られた。モデルによる数値実験から、ユーラシア大陸東部の積雪変動が、中緯度域、高経度域に逆の偏差を持つ大気固有の変動を生じることが明らかになった。今後はこのようにして励起された大気変動がなぜ長期間持続するのかについて検討を行う予定である。 3.十年規模変動の実態をより明らかにするために、全球的な海洋上層の客観解析データセットを作成した。NOAA/NODCによる全球海洋のプロファイル・データを用い、最適内挿法を適用し、1950-1993年の月平均、水平:5゚X5゚格子、鉛直:6層(1m、50m、100m、200m、300m、400m、500m)の海面水温データを作成した。現在、気候値の比較、変動度の解析を行っているが、今後は様々な数年-十年規模変動の振る舞いについての解析を行う。
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