本研究の目的は衝突速度が1km/s以上の高速度衝突における氷破片の速度を計測することにある。本年度はその技術開発のため、低速度(<800m/s)で氷球同士の衝突実験を行い、実験試料の準備や高速度撮影システムの構築を行った。実験資料には多結晶の氷球を用いるが、これは様々な大きさの型を用いて蒸留水を冷却することにより作成した。氷球試料は真空チャンバー中に糸で吊し、そこに弾丸を衝突させる。氷球の衝突破壊の様子は、高速度カメラ(イメージコンバータ-カメラ)により撮影した。このカメラは毎秒100万駒(時間分解能1μs)以上の撮影が可能であり、24駒の連続画像を取得できる。照明には高輝度(50J/F)のキセノンフラッシュランプを用い、シャドウグラフ光学系により細粒の破片まで可視化する。カメラのトリガーは、弾丸が標的前面に設置したレーザー光を切った瞬間にかかるように準備した。このシステムにより低速度での破片速度の計測が可能になった。理論的には、まったく同じシステムにより4km/sまでの高速度衝突による破片速度の計測も可能である。 高速度(1〜4km/s)の氷球衝突実験のために装置開発を行った。開発した加速装置は、直径3mmの氷球(10mg)を1〜4km/sに加速できる性能を持つ。また装置全体を氷点下の大型低温室に設置することにより、氷の高速度衝突実験を可能にしている。この加速装置の試運転及び性能試験を行い、来年度からの本実験に充分な性能が得られることを確認した。
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