研究概要 |
本研究の目的は衝突度が1km/s以上の高速度衝突における氷の破壊現象を調べることである.本年度は昨年度開発した超小型二段式加速装置(マイクロガン)を用いて氷の衝突破壊観察・回収実験を行い,破壊に対する弾丸サイズの影響を調べた. 衝突破壊実験には低温室(-10°C)に設置した小口径(直径1.6mm)のマイクロガンを用いた.この加速装置は10mgの玉を約4km/sまで加速する能力を持つ.試料にはサイズ1.5cmから10cmの立方体多結晶氷を用い,ナイロンの弾丸(直径1.6mm,長さ2.0mm)を4km/sで衝突させて破壊実験を行った.衝突破壊の様子はイメージコンバータ-カメラで観測し,クレーター形成の様子や反対点付近の破片の飛びだし速度を観測した.また衝突後,破片を回収しその最大破片の質量やサイズ分布を計測した. 実験の結果,最大破片とエネルギー密度はべき乗の関係を持つことがわかった.本実験ではこのエネルギー密度のべき指数は-0.97となった.この値は500m/s以下の低速度衝突破壊で得られている-1.3と較べると絶対値はやや小さい.最大破片の大きさはその破片を作った圧力波形を反映していると考えられる.そこで反対点速度から圧力を見積もり,最大破片との相関を調べた.低速度衝突による破片の大きさと比較すると,圧力が約20MPa以上では衝突速度が10倍以上,弾丸体積が1000倍程度異なる衝突でも,その時に形成される破片のサイズはほとんど同じであることがわかった.これは比較している2つの実験でlate stage equivalenceが成り立つことを示している.すなわち弾丸サイズはlate stage effective energyという形でスケーリングされることがこの実験から確認された.
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