研究概要 |
本研究の目的は,断層ガウジなどの断層運動に関係した岩石の,主に磁気的な性質に着目して解析し,そこから過去に働いた応力を復元するための手がかりを得ることである.なかでも,2階のテンソルである磁化率の異方性に注目している.その理由は,非破壊で迅速測定できる可能性が高いからである.一方,磁化率は複雑な物理量であり,磁性鉱物の種類,それらの量と粉径分布,常磁性・反磁性粒子の磁化率,測定方法や測定温度などに大きく依存する.そのため,実際の測定にあたっては,対象とする岩石毎に上に述べたような条件を1つずつ検討していく必要があり,測定のルーチンを確立するのに多くの基礎実験を必要としている. 今年度は,現在世界でもっとも高感度でかつもっとも扱い易いと評価されているSpinner KappaBridge KLY-3Sを購入して設置し,その測定方法をマスターし,さらにこれまで20以上も提案されてきた磁化率異方性を表現するパラメータを実際に計算して評価してみることを行った.補正予算であったため,装置の設置ができたのは1月末であったが,感度,安定性ともに申し分なく性能を発揮できるような設置場所を見つけることに成功した.また,我々が使用している試料容器と座標系に合わせた測定のルーチンもほぼ確立できた.各種パラメータについては,目下その意味を1つ1つ理解しながら,測定データの処理に適応してみているところである. 試料は,京都市左京区の花折れ断層,瀬戸市の猿投山北断層の2箇所で採取した.磁化率異方性測定に適した試料の採取方法を探すために,後者の猿投山北断層では,いわゆる断層ガウジだけでなく,基盤岩,被覆層からも広範に採取し測定を行っているところである.
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