付加体堆積物をはじめとして、含水率の高い状態で堆積物が変形する未固結変形は、三浦半島に分布する中新-鮮新統三崎層中に発達する未固結断層と間隙水の排水様式について検討を行った。試料として断層の切断関係よりもっとも初生の厚さ3mmのlayer-parallel faultを用い、断層の上下20cmについて、X線CTスキャナによる高精度密度分布(1mm×0.36mm^2毎)の垂直変化、水銀圧入式ポロシメターを使って3cm毎の間隙率ならびに間隙径の分布を垂直変化を測定した。また、同時に薄片観察を行い断層の内部構造ならびに非変形層との境界などを調べた。 X線CTスキャナによる堆積物密度と粒子密度を仮定したときの間隙率から求めた堆積物密度とは、有効数字3桁の範囲で必ずしも一致を示さないが、似たような垂直変化を示す。例えば、断層下盤では、断層面の約7cm下の層準より、密度、間隙率ならびに間隙径分布に変化が表れ、間隙率では、断層に近づくに従い、指数関数的に小さくなる。この垂直変化は、径の最も大きな間隙が潰れるために生じており、より小さな間隙径にはなんら変化が認められないことが分かった。しかし、断層内部では、カタクラシスが起こり、固体粒子は細粒化され、このような指数関数の延長から予想される値よりもさらに小さな間隙率となり、より小さな径の間隙までが再構築(reorganization)を受けている。 このような、間隙径の分布から未固結断層は、周囲の堆積物から間隙水を吸収するポンプの役割を果していると考えられる。来年度の計画として、固体粒子の変位量(歪み)について断層内部、断層周辺域と分け、測定したいと考えている。
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