研究概要 |
本研究の目的は,地質調査データに基づいて地質構造を推定する計算機処理システムを具体化することである。本年度は具体的に地質調査所発行5万分の1の地質図幅(新潟県小千谷地域)から3次元地質構造を復元する作業を通じて,基本システムにおけるデータ処理法の検証と改良を行った。小千谷地域に分布する地質体を,基盤と沖積層を含む6つの地層に再区分して,地形の標高データ,地表での地質分布,走向・傾斜,断層の位置を入力データとした。図幅から走向・傾斜や地表の地質分布を読みとるためのデジタイザ入力法の改良,沖積層が自然な形で組み込めるような論理モデルの改良,標高データが生かされるようなデータ配分法や曲面推定法の改良などを行った。その結果,図幅の地質断面図ときわめて類似した地下構造が復元され,データ処理法は現実の地質構造に対して有効であることが実証された。また,地質構造の可視化を含め処理の多くの部分でGIS(地理情報システム)の機能が活用できることがわかり,システムをGRASS GIS上に構築する方針が固まった。一方,「地層累重の法則」や「化石による地層同定の法則」など地質学の基本原理に関する研究では,堆積作用や侵食作用の数学モデルの拡張,地層と地層群の関係の定式化および野外調査から地質構造を決定するまでの論理や推論過程の体系的整理などを行った。これにより専門家の判断が必要な部分(おもに地層の区分や対比に関する判断)と機械的処理で実行できる部分が明確に区別されるとともに,入力データの構造についての指針がえられた。
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